ラーメン店の経営者の方から下記のような質問をいただいた。
質問が面白かったので、公開することにした。
■質問
ラーメンを現行の500円から600円にしたいと考えています。
1 マキャベリの「迫害は一度で、恩賞は小出しに」に従い、一度で値上げする。
2 ドラッカーの「小さくためせ」に従い、段階を踏む。
3 そのポイントは重要ではない。
■返答
きっといろんなビジネス書を読まれてる方だと思いますが、捉えられ方が間違っているところもあるので、簡単に訂正させていただきます。
まず、マキャベリのロジックは、従業員に向けてやってください。笑
マネジメントですね、これは。
でも、迫害しないであげてください、お願いです。笑
ドラッガーのものは、今回のマーケティング施策に当てはまります。
マーケティングはテストです。
なぜなら、一気に舵を切った場合、方向がよければ当たりますが、悪かったら座礁しますから。
では早速、どのように小さく試すかをお伝えします。
その1 アップセルで価格を上げてテストする
きっと、500円のラーメンは、店の定番商品なのでしょうから、
500円のラーメンをいきなり600円にするより、最初はトッピングをオススメしてください。
アップセルっていうやつですね。
券売機からのチケットを受け取る時に、卵はいかがですか?めちゃくちゃオススメです、とか従業員に声かけさせてください。
マニュアルとして。
それだけで、500円→600円になりますよね。
ここでポイントなのが、アップセルできた客がどのくらいいるか、カウントしてください。
方法は、声かけて注文してくれたに券売機で買わせるわけに行かないと思うので、
卵(トッピング)チケットを手元に用意しておいて、閉店時に減った数量をカウントしてみてください。
アップセルがどのくらいできたか分かります。
もしくは、もし券売機にオススメマークをいれてなければ、
アップセル済みのラーメンにオススメのシールを当てておいてください。
お客様に選ばせないというのもアップセルのテクニックです。
そうすると、直でのアップセル、券売機でのアップセルを足して、
全体のどのくらいがアップセルに応じたかの割合がでますよね。
その割合が高ければ高いほど、600円にしても大丈夫ってことです。
ただし、理由がわかれば、っていう条件が付きます。
トッピングが入るというのはその分コストがかかるんだからっていう「理由」をつけて、顧客は納得して払っています。
その2 価格を上げる理由をつける
500円のラーメンがいきなり600円になって受け入れられるお客さんと、受け入れられないお客さんがいます。
なるべく受け入れられるお客さんをつくるために、「理由」を付けてあげましょう。
お客さんはなぜ、あなたのラーメン屋にいくのだろうか?
何かしらのベネフィットがあるわけです。
そのベネフィットをお客さんに聞いてみてください。
近くにラーメン屋がないとか、単純に美味いからとか、いろいろ出てくると思います。
安いから、という理由もあると思いますが、対して多くないと思います。
例えば、美味いからという理由が一番多かったとします。
であれば、美味しさをアップさせるために、◯◯を使います。そのために100円上がります。
などの理由を与えてあげましょう。
それから、お客さんに聞いても出てこないベネフィットは必ずあります。
というのも、お客さんは何で欲しいのかとか、何がほしいのかとかという本質的な欲求を自分で理解していないからです。
だから、お客さんに聞く時に、必ずしなきゃいけないのが、この潜在的欲求の確認です。
特に飲食は、食べる飲むということ提供する商売です。
食べる飲むというのは、快楽ですよね。
快楽の反対側にその潜在的欲求がありますので、今回の場合は、食べる飲むという罪悪感を刺激してみてください。
例えば、美味いから、量が多いから、などの返答が多いと予想される場合、
でも量食べたら、太っちゃいますよね?とか、
食べ過ぎたら、塩分過多になりますよね?とかの質問をしましょう。
おそらく、これらの質問に否定する人は少ないかと思います。
例えば、有機材料で作ったスープしたので、素材の味が生きてまろやかさが出ただけでなく、あなたの健康のためにもいいんですよ、
なんていうメッセージであれば、
快楽をそのままに、罪悪感を消す提案となるので、最も納得性の高い、価格を上げる理由になり得ます。
これはもちろん、実際に出来る範囲があるので、減塩なのか脂肪が少ないとか、何か一つだけでもいいと思います。
上記の2点で、価格を上げる理由を見つけてみてください。
その3 理由をつけたら、同じラーメンでも味が変化したと感じる
人間は、感覚を記憶するのが最も難しいです。
特に、味覚を記憶出来る人は、数%しかいません。
じゃあ、味はどこで記憶するのかというと、「心地よさ」です。
感じの良い店主がいるラーメン屋とか、
面白い内装だからとか、
店員のお姉さんが綺麗だからとかです。
味は二の次で、一口目に、美味いなと感じたらOKです。
つまり、何がいいたいのかというと、
いままでのラーメンを出して、
◯◯の理由で100円あげました、味変わったの分かりますか?
といっても、いろんな理由をつけて説明しようとしてくるんです。
油っぽくなくなったとか、甘さが増したとか、、、
味なんか一切変わってないのに、必ず言ってきます。
その上で、罪悪感を消すような提案のための100円なんだ、という理由付けができていれば、
美味しくなったのに、罪悪感がなくなると、錯覚し、より多く来店する可能性も出てくるはずです。
これを詐欺という方もいらっしゃるとは思いますが、私は企業努力だと思います。
というのも、顧客に満足を提供できるかどうかが商売ですし、
恐らくいろんな問題があって、100円上げたいという結論なのでしょうから、
より多くの人に美味しいラーメンを提供することが使命だと考えている店主からしたら、
店を存続させてより多くのお客さんに満足を届けることだと思いますので、これは企業努力ではないかと考えています。
それに、店主がこれに罪悪感を感じるのであれば、お客さんの健康を気遣うような材料に勝手になっていくはずです。
マーケティングは、商品の価値を顧客に伝わるようにするものですが、
商品が伴っていなくても形をつくることができます。
しかし、まじめに価値を伝えるほど、商品の品質も上がっていくのです。
そうすればより顧客満足に繋がっていくのです。
鶏が先か、卵が先か、ってだけの話ですから。
このように、段階的に、テストしていき、最終的に値段を上げてみてください。
途中でいろんな引っかかることが出てくるとは思いますが、一気に上げるより様々な気付きがでてきます。
マーケティングとは顧客と向き合うことでもあるので、是非真剣に取り組んでみてください。
と、アドバイスをさせていただいた。
改めて、その内容をこのブログに書いてて思ったのだが、こんなぶっちゃけ言うアドバイザーはいないなと。笑
そこら辺のコンサルタントみたいにお勉強だけしていては、こんな提案は絶対できない。
私は自分でビジネスをしていて、つねに思うことだが、
グレーを白にすることが企業努力だ、と思っている。
白を白でやのは大企業の役目だし、黒を白にするのはヤクザだからやってはダメ。笑
だって、倫理的にもリスクが大きすぎるからだ。
だから、グレーを白にする。
目的のための企業努力は大事なのだ。
コメント
グレーを白にする…良いですね。そこに至る理屈と共感形成ですよね。同意。