カップヌードルがブランディングに成功したのは、CMよりもSNSでの拡散を最初から見込んだからである。 | アナーキーマーケティング

カップヌードルがブランディングに成功したのは、CMよりもSNSでの拡散を最初から見込んだからである。

 

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1971年生まれなのに、永遠の高校生、それがカップヌードル。

日清のカップヌードルCM「いまだ!バカやろう!」が打ち切りになった。

お詫び文を見ていただきたい。

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この度、3月30日より開始いたしましたカップヌードルの新CMに関しまして、お客様からたくさんのご意見をいただきました。
皆様に、ご不快な思いを感じさせる表現がありましたことを、深くお詫び申し上げます。
皆様のご意見を真摯に受け止め、当CM、「OBAKA’s UNIVERSITY」シリーズの第一弾の放送を取り止めることに致しました。
今回のCMのテーマであります、「CRAZY MAKES the FUTURE.」のメッセージを伝える「OBAKA’s UNIVERSITY」シリーズは、若い世代の方々にエールを贈ることが主旨であり、今後も、そのテーマに沿って、このシリーズをよりよい広告表現で、引 き続き展開してまいります。この度は、誠に申し訳ございませんでした。

 

まあ、俺たちさ、伝えたいことがあるんだけど、言い方間違えちゃったから、ごめんね、ってことだ。笑

マジか、日清。

スタンスが、世の中ナメくさった若者じゃねぇか。

不倫がバレても、私以外私じゃないのと、ニヤニヤしながら歌ってる、どこぞやのミュージシャンと変わらないではないか。

参った。実に痛快である!

 

 

どうやら、彼らのペルソナは高校生のようである。

今回の「CRAZY MAKES THE FUTURE」キャンペーンは、私はカップヌードルからの若者応援メッセージだと思っていた。

しかし、違った。カップヌードル自体が高校生という設定だったのだ。

高校生のカップヌードルが、CRAZY MAKES THE FUTURE!と叫んでいるという設定なのだ。

カップヌードルがマーケットの中にいるのだ。

カップヌードルの擬人化といってもいいだろう。

イラストでの表現はないにせよ、コンセプトが実に今っぽいではないか。

高校生だから、謝れ!と大人に言われたら、謝るけど、反省はしない。

そういう、若さゆえに怖いものがない、ふてぶてしい高校生。

だから、あのお詫び文。

ちなみに、ネットでオフィシャルを取り下げても、意味はないのも、絶対計算済み。

取り下げたことが話題になるほど見たくなる。

その拡散力や、いかに。笑

創業者、安藤百福氏が、CRAZY MAKES THE FUTUREを体現したそのものだったのだ。

しかし、今の高校生は、生まれた時からカップヌードルがあるので、自分たちのブランドではなく、親のブランドだと思っている。それを、若い人たちにも自分のブランドだと思ってもらえるように、ブランドイメージを若返らせなければなりません。

日経ビジネスで2015年11月2日 日清食品ホールディングス社長 安藤宏基氏のインタビュー

40年以上も前のヒット商品であるカップヌードルは、常に新しい若々しいイメージを身にまとっていかないと、簡単に陳腐化してしまう。

何もしなければ、商店街の一角にある数十年やってるような乾物屋に埃を被った賞味期限ギリギリのカップヌードルが適当に置かれてしまうのだ。

だから、若者もよく使う、ビッカビカのコンビニエンスストアのカップ麺の棚に、常にズラッと陳列されていなくちゃならない。

それには、他の商品よりも高校生に共感される、つまり高校生にとってイメージが良くなきゃダメなのだ。

他の商品よりも選ばれれば、どのコンビニエンスストアだって全店に陳列してくれる。

だから、一番買って欲しいお客さんにフォーカスしたCMでなきゃならないのだ。

「いまだ!バカやろう!」は、何かをバカみたいに夢中でやる尖った若者そのままをカップヌードルというブランドが実践してみせたのだ。

それでクレームが入ろうがどうでもいいのだ。

チキンラーメン、カップヌードルを発明した、日清食品創業者の安藤百福氏の人生だって、めちゃくちゃである。

彼は、太平洋戦争を駆け抜けた時代の方である。

戦後、食糧不足で栄養失調で亡くなる方が多くいた中、塩を売って財を成したが、GHQに目を付けられて脱税容疑で収監されたり。

さらに、信用組合の理事長になったら、信用組合が倒産し、その負債を弁済するために、戦前から蓄えていた財産を全部失って無一文になったり。

失敗のレベルが半端じゃない。

しくじりまくりである。

こうやって、何度も何度も失敗しても立ち上がって、自宅の小屋で1年かけて発明したのがチキンラーメン。

腐らないから流通コストも抑えられるし、ドンブリなら、いろんな栄養がきちんとれるから、栄養失調で人が死ぬのを防げるというわけだ。

当時「魔法のラーメン」として、ヒットしたようである。

まさに、CRAZY MAKES THE FUTURE!

ビートたけし氏だって、ご存知の通り、相当めちゃくちゃだったし、

ムツゴロウさんなんか、いまだにぶっ飛んでて、正直頭おかしい。

小林幸子氏だって、レコード会社と契約切られて、紅白落選したりと、逆境に立たされていたが、ニコ動の属性のファンを掴んで女王に返り咲いた。

新垣隆氏だって、佐村河内のゴーストライター以来、メディアに引っ張りだこである。

 

矢口真里氏の不倫なんか、まだまだ浅いレベルの失敗じゃないか。

いや、むしろ、このCMで返り咲いていただきたかった。

安藤百福氏が夢中になってインスタントラーメンを開発したのと、芸能の世界で夢中になって芸を磨いていた彼らとその熱量は変わらないだろうし、

失敗を乗り越えて、立ち上がってチャレンジする姿も全く同様である。

つまり、このCMを非難するということは、日清食品創業者、安藤百福氏自身を非難することに他ならないんじゃないのか?

ガタガタ抜かしてる奴ら、二度とカップヌードル食うんじゃねぇよ!

って言っても、クレーム入れてるのは、爺さん婆さんばっか文句垂れてるらしいけどね!

きっと、カップヌードルなんて10年に1個くらいしか食わない人たちだ。

若者ターゲットのマーケティングやクリエイティブを経営陣が見て「ひどい」と思っても耐える。

若者をターゲットにしたコマーシャルを打つと、お客様相談室にたくさんのクレームが寄せられます。特に、私と同じくらいの年の方からの批判が、非常に多い。「なっとらん」「日清らしくない」「スピリッツも経営方針もない」って、もうボコボコですよ。

それでも、一部の批判を覚悟で意識的にブランドを若返らせていかないと、ロングセラーにはならない。だから、私やほかの取締役も、もう忍耐ですよ。我々の世代が「ひどい」と思っても、ターゲットに即したマーケティングならやむなしです。

日経ビジネスで2015年11月2日 日清食品ホールディングス社長 安藤宏基氏のインタビュー

きっと、日清食品ホールディングス社長 安藤宏基氏は、創業者の安藤百福氏の魂をきちんと理解され、それを経営戦略に落とし込まれているのだろう。

マーケティング戦略とは、経営戦略をマーケティングの切り口で考えたものだ。

だから、カップヌードルという商品が顧客に提供する価値を何度も何度も考えぬいているはずである。

その価値と同等の経験をCMでマーケットに届けたのである。

カップヌードルを買わなくても、食べなくても、似たような体験を届けてくれたのだ。

何かに夢中になって、寝食忘れたときに、そういや腹減ったな、カップヌードルでも食うか、食ってからまた作業に入ろう。

そういうめちゃくちゃな集中力が世の中を変えていくのを安藤社長は知ってる。

もちろん、創業者の安藤百福氏がそうだったのだから。

だから、批判を覚悟で、耐える。

自分が、自分の世代が、どんだけ、「ひどい」クリエイティブだと思っても。

戦略がしっかりしているから、自分が思っている日清らしさとか、スピリッツなんて、どうでもいいのだ。

そんなもので飯は食えない。

顧客である高校生に共感されるカップヌードルブランドを作ることのほうが重要だからである。

顧客に完全にフォーカスする。

これこそが、マーケティング戦略なのだ。

戦略を決めたら、あとの判断は専門家に任せる。

作ったCMに、良いの悪いのだの口を挟まない。

知らないのに、ガタガタ言っても結果はでないことをご存知なのだろう。

小手先じゃないから、クレーム来るのなんか最初からわかってるわけで、最初からあのお詫び文だって作ってあったはずだ。

そのおかげで、CMリリース直後からネットで話題になっていたし、取り下げたらもっと話題になっているじゃないか。

目的は、ブランドの認知なので、これは大成功のキャンペーンなのだ。

仕込んだマーケティング担当の方や、代理店のプランナーの方に、是非お会いしてインタビューしてみたいものである。

 

マーケティング戦略があるから、メッセージがある。 だから、SNSをどの競合よりも上手く使えている。

我々の時代は、作り手中心のコミュニケーションをしていました。メーカーが商品のコンセプトや特徴について、一方的に伝えていたのです。しかし、今の時代、メーカーはもはや、コンセプトが明確な商品を出せばそれでよく、その後は消費者自身が面白がってくれれば、SNS(ソーシャルネットワーク)を通じて自動的に広がっていく。

かつては、テレビでコマーシャルを打ってから、1週間から2週間くらいたってから、売り上げがどーんと上がっていきました。しかし、今はコマーシャルを打たなくてもSNSだけで発売してすぐに、かつての3倍、5倍と一気に売れることもある。売れ筋商品のピークが、ものすごく高くなった。

だから、商品を担当するブランドマネージャーは、そういう動きを予測してシナリオを描けないとダメなんです。

日清は商品作りもマーケティング戦略に基いて行われているようだ。

今や、商品を売るには、ブランドのコンセプトが明確でないとダメなのだ。

このアナーキーマーケティングが一気に広まったのも、私という商品のコンセプトメイクに拘ったからである。

コンセプトが受け入れられれば、一気に何倍も売れるというのは不思議ではない。

そして、売れ筋のピークが”長く”なっているはずである。

(恐らくインタビュアーの誤植か記載ミスだと思われる)

マーケティング戦略は、このような商品開発にも利用することができる。

全てが一つのコンセプトやブランドメッセージに基いているから、ブレない。

ほとんどの広告主が、こういう伝えるべきメッセージがないから、SNS使ってもたいして効果が出ないのだ。

SNSは顧客とのリレーションシップを強めていくツールである。

ひたすら商品の情報をアップしたり、適当に作ったCFを流す場所ではない。

情報発信側のメッセージの質次第で、見込客の質が全く変わってくる。

コンセプトなき、売り込みばかりのメッセージを投げるほど、見込客がどんどんいなくなる。

あなたもやってみるといい。

例えば、自分のFacebookに、ひたすら意識高い系の投稿を毎日続けてみよう。

きっとびっくりするくらいフワフワキラキラした気持ち悪い人たちからコメントやいいねをされていくはずである。

あなたの発するメッセージで、あたなの身の回りにいる人たちが激変するのだ。

Facebookでなにも発信せずに、ずっと人の投稿を見てる人はべつに誰も寄ってこない。

企業のSNSもどうようで、SNSのアカウントがあってもほっといたら誰も寄ってこない。

つまらない商品紹介ばかりだったら、誰も興味を持ってくれない。

当たり前だ。

だから使えないのは、メッセージがない広告主の責任である。

ほとんどの企業が適当にCMを作り、適当にインターネット広告を作り、適当にSNSやってるだけ。

売れりゃ良いってスタンスだから、エンドユーザーにモロバレしてる。

そんな企業や商品に誰が興味出るか、って話だ。

しかし、マーケティング戦略さえあれば、どんな零細企業でも、SNSを利用して、日清食品と同じマーケティングができる。

そんな時代なのだ。

それが、コマーシャルよりも、利点が大きいのは、この安藤社長のインタビューでご理解いただけるだろう。

だから、マーケティングをWEBで展開するのであれば、日清のような大企業だろうが、中小だろうが、SNSは無視できない。

WEBマーケティングの主軸がSNSにスイッチしてきている時代なのだ。

ソーシャルシェアしたくなるそういうコンテンツが必要になってくる。

カップヌードルのFacebookページを見ても25万人のファンがついていて、オモシロネタ的なコンテンツが掲載されている。

私としては、ここのコンテンツの弱さに絶句したけど、こんなコンテンツで、売上に繋がるというのは25万人のファンを獲得できているからに他ならない。

本来であれば、オウンドメディアを用意して、著名人いろいろなクレイジーな伝説をコンテンツにして配信してもいい。

その中に安藤百福氏を入れておくだけでも、カップヌードルへマーケットの共感は示されるはずである。

実際、このエントリーが話題になっているのだって、このCMのメッセージ

CRAZY MAKES THE FUTURE

に乗っかって、日清のコンテンツの弱さを補完させて、落とし所をつけているだけにすぎないではないか。

とにかくマーケティングの戦略からのメッセージが反映されることで、コンセプトがより一層強いものになっていくのだ。

その時の売上の伸びは相当な大きさになるはずである。

日清さん、売上アップのためのオウンドメディア企画ご提案しますよ!笑

どちらにせよ、オウンドメディアをきちんと運用していないと、SNSでの最大効果は出せない。

WEBマーケティングではそういう戦略的なコンテンツが何よりも重要。

そんな時代になっているのだ。