あなたは、マーケティングとセールスの違いというのをどのくらい理解しているだろうか?
仕事柄、いわゆるマーケティングや広告関係の人に会ったり、関わったりする。
この話は、私が関わっているプロジェクトではないのだけれど、
あるあるだなあ、、、と思って聞いてたことがある。
とあるプロモーションのプロジェクトに、マーケッターやコピーライターが2~3名集まって議論をしていた。
それぞれがそれなりに実績もあるコピーライターやマーケッターらしい。
その中のひとりが、
「もうすぐ3.11なので、この日はプロモーション仕掛けるのをやめたらどうか」と言ったという。
残りの2人は同意し、1人は疑問に思ったので、反論した。
「3.11と、私たちのプロジェクトって、関係なくないですか?」と。
反対した人から、その話を聞いて、私は、そういうのを偽善というんだなと、
思わずひどい言葉が口をついてしまった。
私には、売るという行為に、尻込みしてしまい、3.11のせいにしているとしか思えなかったのだ。
じゃあ、阪神姫路大震災の日は?
3月20日の地下鉄サリン事件は?
東京大空襲は?
戦争の時代は毎日多くの人が死んでるから、毎日?
だったら、売る仕事辞めて、いますぐ、被災地行ってこいって。
コピーライティングなんてのんきにやってる場合じゃないだろう。
できないなら、タダの偽善だ。
つまり、こういうこと言っちゃう人たちは、売るという行為にビビってるだけ。
セールスってことに対して、売ったら変なふうに思われる!否定される!という、
恐怖がつきまとうのだが、それを乗り切れていない。
しかも、マーケッターは、マーケティングを駆使して、売る仕事だし、
セールスライターは、ものを売ることに特化したライターなのに、だ。
マーケティングの世界には、お勉強が昔から得意な人が多いこともあってか、こういうフワッとした人たちが結構いる。
残念ながら、思い返しても、マーケティングを学んだり、広告業界に長くいる人達で、まともに私とマーケティングの議論が出来る人は片手にも満たない。
私にしてみたら、この方々は、まったくもって本質が見えてないと思っている。
なぜ、見えないのか?
私が思うに、
ほとんどのマーケッターやクリエイターは、テレアポとか飛び込みなどの泥臭い、「営業」をやったことがないからだ。
@Department for Business, Innovation and Skills
いや、やった程度ではわからない。
過去に営業で自分を追い込んで、追い込んで、追い込んで、やり遂げたことがないからなのだ。
営業でトップレベルの成績を取ったことがないからなのだ。
喉が枯れるまでテレアポして、足が棒になるまで、アポイントに言って、
門前払いにあいながら、やっと受注して、納品したあとに、
お客様から言われる、ありがとうの一言に涙したことがないのだ。
この一言に出会うまで、ほとんど拒否されるし、否定される。
本当に辛いし、トラウマになるくらいだ。
でも、これは仕方ないのだ。
それでも、最後の「ありがとう」にたどり着くと、それまでの苦労が吹っ飛んでしまうくらいに嬉しいものだ。
これは、商売をやってる人間にとって、最大の名誉。
だって、誰かのために役立つというのは、人間にとって根源的な欲求だし、そうやって生きていかなきゃいけない。
働く、とはそういうことだ。
だから、そういう心から喜んでいただける人たちのために、頑張って商品を紹介して、
その人の役にたてる価値を売っているのが、営業マンなんだ。
そして、喜んでいただける人たちは、声をかけたお客様の全体の10%程度かもしれない。
残りの90%なんて拒否られてるわけだが、それくらいやらないと、
本当に喜んでいただけるお客さんに会うことができないのは、真に営業をやってた人だけは知ってる。
この肌感覚がわからないと、いくらコピーのテクニックが上手くたって、なんにも響かない。
売るということが目的のマーケッターやコピーライターも、つまりは営業マンと一緒だ。
直接あって売るか、媒体を介して売るか、の違いしかない。
そして、どう考えても、対面販売する営業のほうが、楽にセールスできる。
つまり、マーケティングは、媒体を介している以上、対面販売より、はるかにセールスが難しいのだ。
なのに、営業したことないのに、コピーライティングで売上ます、だと?
笑わせるな。
もしできたとしても、相当遠回りしなきゃならない。
身体に覚えさせたほうがよっぽど早いはずだ。
セールスマンシップ・イン・プリント
これは、ジョン・E・ケネディという近代広告の歴史を作ったコピーライターが残した言葉だ。
セールスマンのセールストークを印刷したものがコピーライティングである、というのだ。
私はこの100年ほど前の広告の偉人が残した言葉は、いまなお真実であると思う。
これを理解できていないから、広告で成果を出すというのをあきらめた、
まるでアーティストのように振る舞う商業クリエイターが大手を振って歩いているのではないだろうか。
だから、聞いてみて欲しいのだ。
あなたの周りのマーケティングや広告を手がける人が、どのくらいの営業の経験があるのかを。
残念ながら、ちゃんとした返答を得られる人はごく僅かだ。
考えても見て欲しい。
社会人になってから、デザインしかしていない人、
コピーライティングしかしたことのない人、
映像しかとったことのない人、
WEBしか作ったことのない人、
プロモーションの企画しかしたことのない人、
マーケティングと言う学問しかやったことのない人、がいるのだ。
コピーライティングは一生食いっぱぐれないスキルだ、という人達がいるが、そんなものは嘘だ。
売るということを理解しない限り、コピーライティングのスキルは生きてこない。
だから、現にコピーライティングを学んでも、食えないコピーライターが山ほどいるのだ。
つまり、純然たるクリエイターに、根源的な「売る」という、商売の本質は分からないのだ。
私も同様に、もともとはコピーライターという制作側の人間だった。 そこから、デザインやいろんなクリエイティブを学び、全体のディレクションやプロデュースまでできるようになった。
さらに、アカウントエグゼクティブという名の営業で仕事を取ってくるようになり、社内で様々なビジネスを立ち上げたりもしてきた。 そこから独立して、またビジネスを立ち上げた。
そして、あると気づいたのだ。
しばらくコピーライティングしてなくても、売るということを経験するほどに、
びっくりするような売れるコピーライティングが書けるようになった。
もっと言えば、さまざまな売る手段を手に入れることで、コピーライティングなんてなくても、
売る方法だって見えてくるのだ。 こうやって、商売をいうものを理解できるようになって、クリエイティブを見直すと良く分かるのだ。
マーケッターやクリエイター、コンサルタントしかやったことがない人は、あなたがやっているような実業の商売なんて、全く理解できないのだ。
例えば、最高の立地で、美しい看板や調度品で飾られた店に、人が全く入らない、なんていうことがある。
あなたは儲けるために店を出そうと息巻いて、
それぞれの最高の専門家を集め、彼らが一番いいと思うものを持ちあわせてきた。
なのに、それを組み合わせても、あなたが一番欲しかった儲けは、 専門家たちに支払った金額より少ないっていうことが、そこら辺に転がっている。
金融の流れも、経済の流れも、お金は血液のようにぐるぐる巡わって、その世界が成立している。
企業も全く同じで、仕入れや人事、販売などすべてにお金がぐるぐる回って成立している。
だから、いきなりコピーライティングやデザインの一部だけを小手先でいじくっても成果なんかでない。
中小企業のなかで最も問題が多い「売る」とか「集客」という部分を
ビジネス全体を捉え、どうやってマーケティングを利用して根本的な改善するかということが必要なのだ。
だから、少なくとも、売るということのスペシャリストである営業マンとして、セールスに向かい合ったマーケッターやクリエイターじゃないと、
あなたが満足するような提案や成果は何一つ出てこないはずだ。
なのに、ほとんどの事業家である発注者は、あのデザイナーのセンスがいいから、ウチのサイト作って欲しいと発注し、
費用をけちって、コピーライティングを自社の素人スタッフにやらせ、
納品されたあと暫く経って、集客がないとか売り上がらないとか、効果が無いとか、嘆いているのだ。
・ビジネスとして集客や売上を伸ばすために、マーケティングを使いたいのか?
・あなたの会社の見栄をはるために、マーケティングを使いたいのか?
この2つの論点が途中で差し替わってるのに気づかないのだ。
つまり、依頼する側にも問題があるのだ。
売る力があるマーケッターやクリエイターかどうかを判断するには、あなたが選定眼をもたなければならない。
それには、あなたがマーケティングを学ばずとも、
自分でやってみて失敗したり、コンサルタントやクリエイターに依頼して失敗したりして、
そこから、なにが必要かを知る必要があるのだ。
とはいえ、わざわざ地雷を踏む必要は無いと思うから、私は声を大にして繰り返し言いたいのだ。
その自称マーケッターやクリエイターに、どのくらい優秀な営業マンだったかどうか聞いてみて欲しいのだ。
そこで面白い小咄や当時の伝説の一つや二つカマしてくるような人たちに依頼すれば間違いない。
これは本当に大事なことだ。だから2回言ったのだ。
ただし、忠告しておくが、このような人たちは優秀であるがゆえに、使うあなたの力量も試される。
基本的にあなたの言うことなんか聞かない人たちだ。
仕事に対して、責任感もあるし、異常なほど真剣だからね。
こんな猛獣をあなたは、使いこなさなきゃならない。
あなたはお金を支払うクライアントなのに、猛獣使いにまでならないといけないのだ。
でも、そっちのほうが、あなたの成長にもなるし、プロジェクトとしては最高なものになる。
やるまえから分かるのだ、こういうことは。
だって、何をやるか、よりも、誰とやるか、が、いかに重要なのは、あなたもお分かりだろう?
じゃないと、先のマーケッターのように、何か理由をかこつけて、
売るのやめようと提案され、
あなたが売るべきタイミングを奪われることだってあるんだから。