ここ数年、掃除機のイノベーションが起きている。
ちょっと前まで掃除機なんか、2〜3万くらいだと思っていたのが、いまじゃ8万とか当たり前。
ダイソンからはじまり、日本の家電メーカーも高額掃除機をどんどんリリースしていった。
特にレイコップは、布団専用掃除機として、トップシェア。
世界で300万台、うち日本では、75万台販売実績があるという。
しかも、13年対比で15年は5割も伸びだ。
最も大きな要因は、消費者の悩み解決をバッサリ切り込んだ商品だからだろう。
その悩みとは、「子どものアレルギー」だ。
この悩みは、深い。
子どものことになったら、母親の悩みは何倍にも膨らむので、子どもの健康、というジャンルはそれだけで需要があるマーケットだ。
そう考えると、人口統計だけ見て、少子化だからマーケットないよね、なんて言ってる外資上流コンサルは仕事に感性がない大ボケだ。
まあ、それはさておき、このマーケットは、いろんな産業が入り込んでいる。
食はもちろん、衣類、住宅、家電、などなど。
生活の身の回りのもの全てに関わる産業が関わってくる。
レイコップの事業ドメインは、おそらく家電周りだろうか、空気清浄機でもいいはずだが、多くの先行者がいる。
そこで、掃除機という提案だ。
子どものアレルゲン物質のダニの死骸を叩いて吸引、紫外線で殺菌、というコンセプトは、これまでにない商品となった。
しかも、掃除機は、お母さんが楽に掃除をするためのもの、という松下幸之助以降、ダイソンまで、イノベーションが起こらなかった商品のジャンルでもある。
その時代から4〜50年以上経って、今、こうやって布団専用掃除機という新しいジャンルを築き上げたレイコップのマーケティング力は実に素晴らしいものである。
それに、レイコップ社長の李誠晋氏は韓国の内科医のようで、健康的な生活を作っていくという「私の哲学」を商品にしたものだ、と述べている。
レイコップは私の哲学を入れた製品です。アレルギー疾患の一番の原因は、目に見えないハウスダストとダニ。製品コンセプトは安眠や快眠を提供して健康に役立つことであり、これは全世界で共通するメッセージです。
部分的に変更した点は、伝え方ですね。米国市場では、布団だけでなくソファやカーペットにもダニが生きていることを伝えた上で、製品カテゴリを「ア ンチアレルギークリーナー」にしています。一方、日本では布団クリーナーに変更することで、より製品コンセプトをわかりやすくしています。多くの日本の ユーザーはハウスダウトは認識しているが、アレルギーの原因となることを知らない人が多い。さらにハウスダストが原因で、布団にダニが発生していることも 認識していませんでした。日本には布団を干す習慣がありますが、これ自体はハウスダウトの除去に役に立つけれど十分ではない。こうした正確な情報を伝える ことに集中しました。
日本で75万台突破、「レイコップ」人気の秘密――レイコップが日本で売れた要因を、どう分析していますか。日本の消費者はとてもレベルが高い。いい製品を評価し、選択する力がある。日本では2007年に発売し、2010年に販売代理店がカタログ通販で販売していた…
なるほど、ハウスダストと、ダニがアレルギーの一番の原因ということだ。
しかしながら、ダニって、簡単に死なないどころか、ダニの糞が原因でアレルギーを引き起こすようだ。
その点を中心に、ダイソンが、私の大好きなネガティブキャンペーンを実施した。笑
「布団掃除の真実 – 布団に潜むダニ」
「布団掃除の真実 – UVライトは効果的?」
「布団掃除の真実 – 振動は効果的? 」
「布団掃除の真実 - ダニの数を減らす最も有効な方法 」
日本企業やらないよなあ、こういうの。
インターネットの時代、こういうの消費者は待ってるのに。
企業がちゃんと真実を伝えてくれてるかどうか、ちゃんと見たいのだ。
結局、このネガティブキャンペーンで火が付き、おいおい!レイコップ、お前言ってること違うじゃん!と、みんなダイソンの肩をもった。
インターネットの口コミでは、レイコップは、もはや詐欺呼ばわりだ。
ダイソンお見事!といきたいところではあるが、ちょっとまって欲しい。
このCMの「干すよりキレイ」ってコピーは、なかなか秀逸であるが、これさえも詐欺よばわりするのはいかがなものか。
実際、ホコリだらけの室外の天日干しよりキレイになるだろうし、ちょっと調べていくと、UVは殺菌するとは言ってるが、ダニを殺す、とは言ってない。
つまり詐欺呼ばわりしてるのは、ダイソンとレイコップ比較検討して、ダイソンはやっぱり高いなあと、買わなかった人たちだ。
こういう購入後の後悔の矛先をレイコップに向けさせてるのだ。
だって、ダイソンバカ高い。レイコップ2〜3つくらい買えるわけだ。
ダイソンとしても、この価格の高さが自社の弱点なのを知ってるし、どうやったら納得してもらえるかというのは課題であるはずだ。
このダイソンのネガティブキャンペーンは、ただ自社製品の有効性を謳ったのではなく、この価格の高さを納得してもらい、買い直してもらうために、バイヤーズリモース(購入後の後悔)を助長させるマーケティング戦略だったのだ。
バイヤーズリモースとは、購買者が購入後に抱える、これ買っちゃったけど、正解かな?という、購買心理である。
あなたも、経験があると思うが、とくに価格が高ければ高いほど、このバイヤーズリモースを抱えやすい。
購入後、それ買ったの正解だよ!と第三者からお墨付きをいただきたくなるのだ。
よくやるのが、購入後、あなたが買ったのは正しいですよ、というメッセージを販売者から投げかけたり、他の購買者の声を利用して納得させる手法だが、競合がディスってバイヤーズリモースにトドメを刺す、というのは、見たこと無い!笑
あ、君んち、レイコップ買っちゃったの?あ〜それ失敗!
ちょっとダイソンのCM見て欲しいんだけど、レイコップじゃ全然アレルギー治んないよ。
君は、値段につられて、安いレイコップ買うからだめなんだよ。安いんだから効くわけないじゃん!
ダイソンのは、めちゃくちゃ吸引するから、高いだけあって、アレルギー対策にはバッチリだよ!
インターネット見てごらん!いろんなメディアやYouTuberが比較して、ダイソンのほうが良いって言ってるでしょ?
もうさ、ヤフオクにレイコップ売っちゃってさ、新しく買い直したらどう?
この悪魔のようなダイソンのマーケティング戦略は、ステレオタイプのアンチ韓国が多い日本人の心情に乗って、瞬く間にバズっていったわけである。
改めて、口コミみてると、まあ、酷い。
レイコップが、やっぱり韓国製と聞いて納得しました!
なにがUVでダニ殺すだよ!叩いたってダニ吸い取らないじゃん!韓国人の嘘つき!
、、、、こんな内容ばっか。
主語がレイコップなら分かるけど、韓国も韓国人も関係ないからね、これ。
なんという偏見だろうか。
いいがけんにしろ!と、いいたくならないだろうか?
実に醜い。
しかし、この現象全部、英国ダイソンの悪魔のマーケティング戦略である。
そして、最後に、私の見解。
レイコップだろうが、ダイソンだろうが、布団に掃除機かける回数増えたら、圧倒的にアレルギーになりにくいと思うのだが、、、
大きな掃除機をわざわざ引っ張り出さずに掃除できるハンドクリーナーを布団用として消費者アピールし、布団掃除の習慣を根付かせたことが革命的なんじゃないのか?と。
実際ウチもダイソンのハンドクリーナー買ったけど、掃除の回数が増えて満足。
きっとレイコップ買った人もそうでしょ?
ってことで、ダイソンのバイヤーズリモースの呪い、解除させていただきました。笑