スナックCANDYにモノ申す。スナックCANDYはスナックではない。 | アナーキーマーケティング

スナックCANDYにモノ申す。スナックCANDYはスナックではない。

よもやま話

先日、アナーキー隊員に誘われて、西野氏のスナックCANDYに行ってきた。
ママのもんちゃん(ホームレス小谷氏の嫁)やホームレス小谷氏も人柄がよくて、これはこれで楽しかったのだが、一言言わせてもらいたい。
これはスナックではない。
宅飲みCANDYだ。

そもそもスナックというのは、客が行きたいときにふらっと入れなきゃいけない。
客にしてみたら、スナックは俗世のシェルターなのだ。
昼間の辛さをグチにもならないようなどうでもいい話を聞いてもらえる場所。
俗世を捨てたようなママが、空気を読んで相槌を打ってくれたり、逆にひたすら面白い話をしてくれたりして、よく分からんけど明日から頑張れんなあ、みたいになるのがスナックだ。
スナックに行きたい気分というのは、モヤモヤしてるときに行きたいわけで、いつ客がモヤモヤするかなんていうのは客の気分次第。
ほとんど店がやってないというのは、客が行きたいときにいけない。
これは致命的である。
スナックには、この唯一の客のワガママだけは受け止めていただきたいのだ。

それに、スナックには不文律のルールがある。
それをわざわざ文字に起こしてルールとするのも無粋である。
行くのに手土産、トイレ入るのにチップ、店を閉めるのに客が手伝うなど、こんなことを明文化して客にやらせるスナックはない。
一見の俺はお前の友達でもなんでもない、ただの客だ、からすべて始まるのだ。
こういうのは、仲良くさせてもらってから、客が自発的に気遣うというのが筋ではないだろうか。
しかも、飲み物が200円くらいの缶チューハイを800円で、というのも如何なものか。
スナックなんだから、酒作っておもてなしを、と思ってしまう。

さらに、クラファンで月500円というのもいただけない。
500円とるなら、毎回飲み物一杯無料とかにして客のメリットがないと。
クラファンで800人×500円=40万程度上がってるわけで、見立てのところ、家賃を半分くらいかなと。
サービスを提供する前の金は人の金だ。まるまる利益にしちゃまずい。
これは支援してくれる人たちへの還元にしないと離れてしまう。
店で利益を出して、家賃や人件費を払うことを前提としないと、なんでなんにもメリットないのに毎月500円払ってんだ?と見抜かれる。
客はそんな馬鹿じゃないからね。
でも、この約800人って、ちゃんと酒と向き合ってるヤツ少ないのかも。
ほかのスナックと比較できなきゃ、違和感なんて出てこないから、払い続けるのかもしれない…
ここに500円毎月払うんなら、年間6000円でしょ?
だったら、5〜6000円握りしめて、そこらへんのスナック行ってみればいいのに。

と、まあ、いろいろ思うことはあるものの、新しい取り組みで面白いとは思うが、スナックの本質はここにはない。
西野氏のファンが西野作品の世界観に浸るイベントスペースだ。
ないしは、前田氏の仲間が集うオフィスの一角を開放してる感じ。
それならそれでいいのだけど、スナックにこだわるのであれば、もっとひとりでスナックに通って、スナックを愛し、スナックの本質を理解する必要があるんじゃないだろうか。
もっと飲み歩いて、いろんな酒飲みの客に会って、酒を通じて、飲み歩く人の気持ちをを知ることが大事だ。
そこを理解して、新しい取り組みをするのはいいと思うのだが、これはあまりにも本質からズレている。
いまのCANDYは、まさに宅飲みBARというのが適切だろう。
加えて、マーケティング的に「スナック」と言っているとしたらなおさら、スナックを語るべきではない。
スナックとは、飲兵衛からしたら、とてもプライベートで神聖な場所なのだから。

そして、今回スナックCANDYを体験して、どういうつもりで作ったのかなあと、これらの記事を読み返すと、違和感が確信に変わった。

人生の勝算】下町のスナックはなぜ潰れない? 「SHOWROOM」前田裕二氏から学ぶ、絆が生み出すコミュニティの重要性とは

【西野亮廣×永藤まな×前田裕二】“個の力”が求められる現代で輝きを放つためには?

ここに欠落しているのは、スナックという職業のプロフェッショナリズムである。
ママは気分で店を出したわけでもなく、アルバイトでもないし、毎日毎日遊んでるわけじゃないのだ。
10年20年と苦労して汗をかいて店をやってるのが見え隠れする、場の回し方。
例えばママと話してたと思ってたら、知らぬ間に他の客と話していて、その間ママは違う客の相手をしていたり。
カウンターが満席でも、中一人でも、全員を楽しませるし、結果、ママと話し込んだ気にさせられちゃうという…
考えてもみよ!このヴァーチャル1:1対応ができる神業を!
さらに、気の合いそうな常連客とさらっと繋げてくれたり、空気を乱す感じの客だと思ったらすぐに帰ってもらったりと、始終気を利かせ、とにかく居心地がいい場を作ってくれる。
こういうの一つ一つに、すげえな、あのママは、と敬意の念を客は持つ。
私はカウンターの中を「聖域」と呼んでいて、なにがあろうが絶対中に入らない。
私ごときでは太刀打ちできない空間であり、中とカウンターとでは見える景色が違うのだ。
中にいるママやマスターは仕事だから飲んでも酔えないと皆口を揃えて言うくらい緊張感をもって仕事に取り組んでいる。
それが分かるから、片付けを手伝ったり、グラス運ぶのを手伝ったり、しちゃう。
いつも世話になってるからと手土産もっていったり、しちゃう。
こんだけしてもらってるからという気持ちにさせられてるから勝手に、しちゃう、のだ。
これが自然のコミュニケーションなのね。
こういうのを粋な関係って言うんだと思うのだ。
だから、ファンが付くし、この場自体がコミュニティーになってく。
じゃないと、社会的にそこそこの地位を持つおっさんが通うわけがないし、少なくとも店を応援しようという気にすらならないだろう。
スナックでコミュニケーションが成立するのは、こういう圧倒的なプロの仕事に対して、ファンが付くということ。
プロの技やスタンスに対して、気づいたら一緒に育てたいとか応援したいという気持ちにさせられる。
このクオリティなしに、どんなにITが発達しようが、ファンとのコミュニケーションは続かない。
だから、素人でもファンは付く、はあり得ない。
これでもか!とプロ対応して楽しませてくれることに対して、勝手にファンになっていくもの。
スナックにしろ、アイドルにしろ、ミュージシャンにしろ、客任せありき、で考えてはならないのだ。
SNSでファンがいて、毎月500円×800人の金額が入ってきて、さあ、スナックだからお客さんヨロ!じゃないのよ。順番が逆。
で、スナックってさーコミュニティーじゃーん、お客さんが参加してくれんじゃーん、もう客を巻き込んでビジネスやる時代じゃーん、という、その表層をすくって形にしても、違うものができあがっちゃったのが、CANDYなのかなあと。
そもそも、これじゃスナックとしての深みが出てこないでしょ。
そういう意味でも、CANDYは仲間内で集う箱。
だから、宅飲み CANDYのほうがしっくりくるのだ。
まあ、私も、彼らがスナックを語ってなければ、ああ、面白い店だね、また来るよ、で終わってたと思うが、これだけガンガンに語ってた分、おいおい!スナック分かってねぇじゃん!となってしまった、私の行き場のないこの気持ち。
スナックをこれだけ掲げている以上、いちスナックファン・いちBARファンからしたら、いやあ、なんともったいないことをと…
スナックとかBARって、こういうのをベースとした人と人とのつながりなのだ。
せっかくなら五反田で長くやってもらいたいし、みんな良いヤツらだし、いろいろ試行錯誤してるし、そういうのを感じてしまったゆえに、正直心から応援したいと思っている。
実際楽しかったし、また機会があればお伺いすることもあるだろう。
でも、まあ、せめて、酒くらいは作って欲しいなあ…
缶やめて酒作るだけで、飲み口全然柔らかくなるから、酒出まくって売上倍くらい変わると思うのだけど。
このやるせない気持ちを分かってもらえることを祈りつつ、煩型のこの物言いを許していただきたい。
西野氏や前田氏は、こういうの分かってると思ってたのだが…

ともかく、スナックCANDYの実態に触れることができて、とても勉強にはなったが、もっとヤバくて最高なプロがやってるスナックはそこら中にある。
だって、ここは百戦錬磨の魑魅魍魎が集まる五反田だぜ?
入ったら最後まで笑い止まらんスナックとか平気であるんだよ。
そんな中で、CANDYありなら、私もクラファンで飲み屋やってみようかなと思ったりして…
いや、クラファンでガールズBARのほうが、いい女の子集まって儲かりそうだな…笑

ということで、場作り、コミュニティー作りの話だったが、4月19日五反田近くの不動前のBAR TRIOにて、私が主催するDJイベントを開催する。
音楽と酒だけで、みんなと繋がれる場を作るのが目的だ。
不動前で開催中のThe Rolling Stones Exhibitionismにかこつけた、The Rolling Stonesのイベントだが、今回はアナーキーマーケティングの裏イベントみたいな側面もあってもいいかなと。
一見さんが入りにくそうな、アナーキーマーケティングというスナックの重い店の扉の向こう側に招待しようという試みとして捉えてもらえるといいかもしれない。
ここでは、私が目指す、マーケティングの本来の形を提示したいと思う。
これに20年前に気づいてやり続けている大先輩がいたことを最近知ったのだ。
その方の話を聞いて、そりゃそうだ、こういうことですよね、と膝を打ちまくった。
それが何かは、文章にしても分からないものだ。
だから、参加して体験してもらったほうが早い。
ちなみに、私もDJで参加するが、酒作る方はプロのバーテンだから安心してくれ。
まあ、小難しい音楽とか分からなくても、みんなで五反田で飲もうぜ!というイベントなのでお気軽に。
そんな告知の前振りでした。
ちゃんちゃん。